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[No.1]
 序章
【登場人物】
ゾーマ、マリア(DQ5)、セフィロス、エビルマージ、ヘンリー、アルス

広間に、重く低い音が響き渡る。
 同時に、倒れていた人々も、次第に意識を取り戻していった。
 地響きさえ立てながら、扉はゆっくりと開いていく。
 そして開ききった時、誰もが背筋に悪寒が駆け抜けるのを感じた。
 強烈な邪気とともに、1つの影が姿を表す。
「ようこそ、選ばれた者たちよ……」
 この城の主、大魔王ゾーマは、地の底から響くような声でゆっくりと告げた。
「これから汝らには、殺し合いをしてもらう」
 殆どの人間が状況を理解できない中、一人だけ口を開いた者がいた。修道服に身を包んだ女性、マリア。
「こ、殺し合いって……どういうこ」

――彼女は、最後まで言葉を続けることが出来なかった。
 きっと、何が起こったのかもわからなかっただろう。
 マリアの体が、ぐらりと前に傾いだ。
 彼女の首は、体と反対の方向に、軽い音を立てて転がり落ちた。

一瞬の間……

そして、青暗い広間に、女性達の悲鳴が木霊した。
 玉座に鎮座する、大魔王の口から、低い笑い声が漏れ出す……。
「わはははははははっ!少し驚かせたようだな……。
 我が名はゾーマ……闇の世界を支配する者。
 さて、唐突ではあるが……お前達には、互いに殺し合いをしてもら――」
 その瞬間、ひとつの黒い影が、大魔王に飛び掛った。
 黒い影は空中で、自らの身長の倍はあろう長剣を
 大魔王の眉間に目掛け、寸分の狂い無く突き立てた。

セフィロスの攻撃!
 ミス!ゾーマはダメージを受けていない!

青い閃光が広間を一瞬照らし出す。
 広間の壁面に彫り込まれた、様々な邪教の神達のレリーフ。
 周囲を取り囲む浅い池からは、ヒトの死体の手足とおぼしきモノが屹立している。
 再び広間に女性陣の悲鳴が木霊した。
 黒い影――セフィロスは弾き飛ばされ、反対側にある祭壇に強く叩きつけられていた。
「ほほう……なかなかの攻撃だ。しかし無駄なこと……我がバリアの前に、敵は無い」
 大魔王の眉間で静止している長剣を、ゾーマは手にとって念じた。
 すると、正宗は音も無く砕け散った……。
「さて、まず初めにそなたらの武器を没収するとしよう」

ゾーマの指先から、凍てつく波動がほど走り、109人の間を駆け抜ける。
 武器を持つ者達の武器は、砂のようにあっけなく砕け散った。
「さあ、109人の選ばれし者達よ!我が生贄となれい!
 自らの命が惜しくば、互いに滅ぼしあうのだ。
 そなたらの苦しみは我が悦び。その苦しみをわしに捧げよ。わはははっ……!」
広間に大魔王の笑い声が響き渡る。
「それでは、ルールを説明するとしよう」

ゾーマの言葉と共に、どこからともなく現れたエビルマージが、参加者達の前へ歩み出た。
 「これから説明を始める。質問は後で受け付けてやるので、私語は慎むように。……あの女のようになりたくなければ、な」
魔道士の言葉に、一人の青年が拳を握り締めた。爪がくい込み、血が溢れ出す。
 青年=ヘンリーの顔には、怒りと憎悪がありありと浮かんでいた。
「後ろの通路から通じている部屋にある『旅の扉』は、ある島へと繋がっている。
 お前らにはそこで殺し合いをしてもらうわけだ。
 もちろん、死亡者の人数や名前は、1日2回……日の出と日没の時刻に教えてやる。
 それ以外にも、大事なことを告げる場合がある。聞き逃したりしないように、せいぜい気をつけることだ。
 ……おっと、そこの男。変な真似はするなよ?」

ヘンリーの様子に気付いたエビルマージは、嘲笑うかのように言葉を続けた。
 「お前らの首を見てみろ。……銀色の首輪があるだろう」
 その言葉に、全員がのど元に手を当て、戦慄した。

――一体、いつの間に?

たった今殺されたはずの女性の首に何も着いていないことから考えれば、
 武器を破壊した際、同時に着けられたと考えるのが妥当かもしれない、が……
 絶句する『参加者』たちを前に、エビルマージは覆面の下で邪笑した。
「許可なく戦場から逃げようとしたり、我等やゾーマ様に刃を向けようとすれば、首輪が爆発する。
 また、24時間以内に誰も死ななかった場合も、爆発だ。
 生きて帰りたければ、自分が最後の一人になるまで戦うしかない。
 ……言っておくが、無理に外そうとしても無駄だ。下手に外そうとすれば、それだけで爆発するようになっている。
 最も、異世界のからくりにゾーマ様が直々に呪いをかけた品……元よりそう簡単に外せる代物ではない」

低く、冷たい笑い声が、広間で不気味に反響した。
 ひとしきり笑い終えた後、エビルマージは説明を再会した。
「これから、順次名前を読み上げ、旅の扉の間へと案内する。
 そこで『食料』と『地図』、『明かり』、そして『武器』の入った袋を渡そう。
 ……武器といっても、使えないモノが入っている場合もある。その場合は、自分の運の無さを恨むんだな。
 武器を確認したら、旅の扉に入ってもらう。島についた時点で、ゲームスタートだ」

エビルマージの説明の中、『生贄』達の恐怖や絶望、憎悪、諦観、そして警戒……。
 そういった感情が、広間の空気を締め付ける。
 そんな中、アルスはひとり、何とも言えない不思議な感覚に陥っていた。
 始まりは、この異様な場所で目を覚ました時。
(僕は、この場所を知っている……?)
 だが、どうしても思い出せない……。
 ゾーマの姿を見た瞬間、同様の――しかし、更に強い感覚が、アルスの中を駆け巡った。
 それでもやはり、何も思い出すことはできなかった。
 必死で何かを思い出そうとするアルスの大魔王を見つめる視線が、大魔王のそれとぶつかる。
 アルス以外、誰も気付かなかったが、
 ゾーマの口元に一瞬、不気味な笑みが浮かんで、消えた。

「それでは、まずアルス!!こちらに来いッ!!」
 突如自分の名前が呼ばれ、アルスはハッと我に返った。
 渋々立ち上がり、旅の扉の間の入り口に立つ。
「これが『ふくろ』だ。この中に先程述べたアイテムが全て入っている。
 それでは、この扉を開き、旅の扉から――」
「待てい!アルスよ!」
 エビルマージの言葉を遮り、ゾーマが突如口を開く。
「これはお前への餞別だ……受け取れ。大切にすることだな……わはははははっ!!」
 ゾーマの手から放物線を描き放たれた物体を、アルスは片手で上手くキャッチした。手を広げてみる。
 それは、変わった紋章の上に『ROTO』と刻み込まれた、小さなメダルだった。

【マリア(DQ5) 死亡】
【残り 110名】

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