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[No.25]
 かくれる
【登場人物】
ギルバート

生き物の気配のしない静かな森。その中に1つだけ、静粛を乱す気配があった。
 ガサガサと草木を掻き分け、息を切らして駆ける男…ギルバートは、何も考えずにただ、ただ、逃げていた。
 恐怖から。
『これから汝らには、殺し合いをしてもらう』
 この言葉を聞いた時、彼には始め何を言っているのか理解できなかった。
 目が覚めたら見知らぬ場所、周りには見知らぬ人、そして目の前に見知らぬ――異形の姿をした者。
 ただでさえ混乱する状況に加え、気の弱い彼の前に駄目押しとばかりに転がる、人の首。
 その瞬間から、彼の思考は恐怖に凍り付いた。

何?いま自分はなにをしている?なぜ自分はこんなところにいる?
 たすけて 誰か 人が死んだ 殺された 嫌だ 殺される 殺し合い たすけて 死にたくない
 アンナ――
 ドザァ!
 元々体力の無い彼の体はすぐに限界をむかえ、足をもつれさせて転倒し、
 とっさに受身を取ることも出来ずその端正な顔に傷を作った。
 痛みをこらえ、うめきながらよたよたと起きあがろうとする。
 一度止まってしまったせいかもう走り出す気は失せてしまった。
 ギルバートは上半身を起こすと、そのままひざを抱えて座り込んだ。

しばらくして体が休まり、気分の方も少し落ち着くと、これからどうするかを考えだす。
 戦闘技術の無い彼には殺し合いに参加して最後の一人に生き残れる自信など無く、
 このまま隠れ続けると言う選択肢しか思いつかなかった。
 しかしそれには問題があったことをギルバートは思い出した。
 いつか誰かに見つかるという危険もあったが、それよりも深刻で確実な問題…それは首輪だった。
 このゲームのルールとして日の出には次のエリアに移る事になっている。
 そして移動には制限時間が存在し、いつまでもこのエリアに留まっていれば首輪が爆発すると言うのだ。
 死なないためには早く、次のエリアへと渡る扉をくぐらなければならない。

けれど
 ――その時、他の参加者に会ってしまうかもしれない。
 ――攻撃を仕掛けられるかもしれない。
 ――そしたらぼくは、死ぬかもしれない。
 ――そうだ、武器は?殺し合いのためにと武器を渡された。もしかしたら凄く強力な武器かも。
 武器さえあれば、強力な武器さえあれば、もし見つかって殺されそうになっても身を守れるかもしれない。
 ギルバートは取り出した支給武器を握り締めると深くうずくまり、恐怖から逃げようとするかのように、目を閉じた。
【ギルバート 所持武器:クイックシルバー 現在位置:いざないの洞窟より西の森
 行動方針:ひたすら隠れる。恐怖のため、他者と遭遇すると錯乱する恐れあり】

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