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[No.31]
 赤色金色お姫様
【登場人物】
ゼル、アリーナ、サラマンダー

「らぁっ!」(先手必勝!)
 気合と共にゼルが飛び出す。 と、同時に赤い男も飛び出していた。
(うぉっ!?)
 カウンター気味に放たれたストレートをゼルは寸での所でかわす、
 第ニ弾、右脇腹へのショートアッパーを肘でガード、と、瞬間ゼルは後ろに吹っ飛ばされた。
「ぐっ!」
 ・・・ザッ 何とか受身を取り着地する。
「どうした、 いいのは威勢だけか? あぁ?」
 赤い男はその場で止まったまま言い放つ。
(ちくしょう、速ぇ!)
 最後の一撃、何をされたのか全然分からなかった。 ガードした筈の右脇腹に鈍い痛みが残っている。
「そっちのお嬢ちゃんも遠慮しなくていいんだぜ? なんならニ対一でも・・・」
「ざけんなっ!!」
 ゼルが吼える。
左・左・右・左  ゼルのラッシュを赤い男は難無くかわす。
「遅え遅え」
「っのやろ!」
 顔面へショートフックを放つ、流石にかわせなかった様だ。ガードを見計らい、ゼルは身を沈ませ足を水平に振る。
(水面蹴りっ、これでどう・・・)
 決まった、と思った瞬間、側頭部に衝撃が走りそのまま地面に叩きつけられた。

アリーナはニ人の攻防を呆然と見詰めていた。
 ----レベルが違いすぎる----
金髪の男の動きは決して遅くない。 目で追うのさえやっとだ。
 さっきの水面蹴り、自分なら間違い無く喰らっていた。それをあの赤い男は緩慢なステップだけでかわし、蹴りを浴びせた。
 脇を冷たい汗が走る。 逃げ出そうにも、体は構えたままで固まってしまっていた。

ゴッ!
 ゼルの一撃が初めてクリーンヒットした。
 赤い男の動きに目が慣れて来ている様だ。
 最初に喰らった脇腹への攻撃もニ度目が来れば何の事は無い。唯のフェイントだ。
(く、コイツ・・・。)
 サラマンダーは肘打ちをアゴに喰らったままボディに数発浴び、そのまま後ろへ跳んだ。
「・・・へっ、いいねぇいいねぇ。それでこそいい殺し合いが出来るってもんだぜ」
(殺し合いにいいもへったくれもあるかよ・・・。)
 ゼルは心内で毒付く。
 赤い男の動きに付いていける様にはなったが、それでも実力はこちらが劣っていた。
 栗毛の少女を見やる。 実力の程は知らないが、決して弱くは無いだろう。
(やっぱりニ人掛かりで・・・)
 赤い男がゼルを代弁するかの様に口を開く。
「お嬢ちゃんは見てるだけか? それとも腰が抜けて動けないってか?」
(くっ、)
 放たれたセリフは事実だったが、元来の負けん気の強い性格がその全身に力を与えた。
 どんな相手でも、馬鹿にされたら黙っていられない。
「お嬢ちゃんじゃ無いわよ・・・、 私は・・・」
 拳に力を込め、地を蹴る。
「お姫様よっ!!」

(ちっ、)
 サラマンダーは舌打つ。 思いの他、2人のタッグは強かった。事実、サラマンダーは押されていた。
 連携も取れ始めている。 余程戦い慣れていないとここまで合わせる事は出来ないだろう。
 (ナメてたかもな・・・。 だが、これこそ俺が求めたモノだっ!!)
「うおおぉぉっ!!」
 叫ぶと同時、拳に漆黒の霧が纏わり付く。 その拳を金髪の男に向かって伸ばす。
-ズ-
 ゼルはその拳をガードする、が。
「ぐああ!?」
 そのままその場に倒れ込む。 異変を察したアリーナは慌ててその場から逃れ出る。
(何だ今の? かっ、体が重ぇ!)
ドン
「ぐっ!」
 赤い男が金髪の腹を蹴り上げる。金髪は伏せたままの老人の傍まで飛ばされた。
「ガードしたって意味無ぇんだよ。重力の波は空間を突き抜ける・・・」
 そう言い、両手を広げると赤い男の体がほんのりと輝く。
 光が戻ると、赤い男の傷は癒えていた。
「な、何それ? 反則よっ」
 アリーナは呟いた、が、赤い男はそれを聞き逃さなかったらしい。
「何甘い事言ってやがる。こいつは生き残りを賭けた戦争だ。
 戦争に反則もクソもねえ、 お姫様はこんな事も知らないのか?・・・うおっ?!」
「いつまでもほざいてんじゃねえよっ!」
 いつの間にか起きていたゼルが赤い男の頭を掴み、後ろに捻じる。

ゴッ!
「ぐあっ!」
 ヘッドバッドが鈍い音を立てて赤い男の眉間に突き刺さる。
「おら、もいっちょ!!」
「調子乗ってんじゃねえっ!!」
 サラマンダーは金髪を引き剥がそうと脇腹に肘を打つ、が、手の力は緩まない。
「おらっ!」
ゴッ!! 二撃目、さっきより気合の入った一発にサラマンダーは思わずたじろぐ。
「しつけえんだよゴラァッ!!」
 再び漆黒の霧を纏ったその拳を叩き込む。流石に耐えられなかった様だ。金髪はお姫様の足元まで滑っていく。
「大丈夫?」
 アリーナは足元の金髪に言葉を掛ける。
「何とかな・・・。 それよりもよ、お姫様」
「ええ、黒い拳はともかく、回復は厄介よね・・・」
「そこでちょっと御相談なんだけどよ・・・」
 不意で喰らったダメージは大きい。まだ頭がクラクラしている。
(ぐっ。)
 顔を押さえ、二人を見やる。 何やら言葉を交わしている様だ。
(仕掛けて来ねえのかよ・・・)
 サラマンダーはもう一度チャクラを練ろうと気を込めるが、金髪の言葉に阻まれる。
「させるかよっ!」

ドン!!
 駆けて来た金髪の拳が腹に突き刺さる。
「野郎!」
 そのまま体を捻り、回し蹴りを繰る。ゼルは蹴りを頭に喰らいながらも赤い男の胸に裏券を叩き込む。
(しぶとい野郎だ。)
 いくら殴っても殴り返してくる。
 グラビデ拳を二度も喰らって、まだこれだけの反撃が出来る奴はサラマンダーの記憶には無かった。

ド!!
 金髪のミドルキックが太腿に当てられる。
(いい加減くたばりやがれ!)
 三度目の黒い拳。 しかし半ば雑多に振り上げられたそれをゼルは身を引いてかわす。
(今だ)
 がら空きの胸に向かって、先程老人からルートしておいた呪文の書を発動させる。爆裂の呪文。
「イオ!!」
 光球が赤い男に向かって走る。
「けっ! 何企んでやがるかと思ったら、俺には魔法は効かねえんだよ!!」
「イオ!!」
 ゼルは再び呪文の書を発動させる。
 サラマンダーのリフレクトリングに撥ね返された光球は後を追う光球とぶつかり、爆発する。
 轟音と共に炎煙が吹き荒れる。 リフレクトリングも爆発の煙までは撥ね返せない様だ。
「ちっ、目晦ましかよ」
煙の中を襲い来る気配に拳を叩き付ける。
「セコい手使ってんじゃねえ!!」

ガシャァァン・・・
「なっ?!」
 拳が捉えた電話機は耳障りな音を立て砕け散る。
 瞬間、サラマンダーは胸を貫く冷たい感触。そこから延びるショートソードの柄を握ったお姫様の姿を捉えた。
「・・・囮、か・・よ・・・」
 荒い息でアリーナが続ける。
「セコい手には変わり無いけど、ねっ・・・」
 腕に力を込めて、根元まで剣を押し込める。赤い男は倒れ、そのまま動かなくなった。



「・・・まったく、この先ずっとこんな調子なのかぁ? 嫌んなるぜ・・・、なぁお姫様?」
「・・・うん・・・」
 人を刺した。 その始めての感触が残る両手をアリーナは見詰めていた。
「・・・、じゃぁよ、俺は行くからよ、 ・・・お姫様はどうするんだ?」
「え、えっと、・・・私はもう少しここに残るわ・・・」
 せめて名前ぐらい、と思ったが、どうやら向こうにもその気は無いみたいだ。一緒に行くのも、何だか心が引けた。
「そっか、 あ、コレ爺さんのやつ。 まあお守りみたいなモンだ。・・・じゃあな」
 そう言って金髪の男は駆けて行った。
(全く、タフなヤツね・・・。)
 半刻後、誰も居ないその場所に二つの小さな山があった。
 その中央に一本のショートソードを構えて。
 太陽は南南東に位置していた。
【ゼル:生存
 武器:イオの書×3(テラから)
 現在位置:アリアハン城南の森やや東  行動方針:とりあえず人目を避け、休憩】
【アリーナ:生存
 武器:イオの書×4(テラから)・リフレクトリング(サラマンダーから)
 現在位置:アリアハン城南の森中央  行動方針:とりあえず人目を避け、休息】

【サラマンダー:死亡 死亡位置:アリアハン城南の森】
【残り102人】

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