[No.46]
回復マテリア
【登場人物】
カイン、エアリス
―― 西部山岳地帯 ――
「あ、けっこーおいしー」
ザックスの位置から1kmほど離れた森の中。ピクニック気分な少女が一人。
少女…エアリスは食事をとっていた。
「ごちそーさまでした」
こんな血なまぐさいゲームのまっただ中だと言うのにそんなようすは微塵も感じられない。
ただ、少女の首についた首輪がそのゲームが事実であることを物語っていた。
「これからどうしようかなあ」
きっともうゲームは始まっているのだろう。もしかしたらもう既に死んでしまった人がいるかもしれない。
そう考えるとエアリスの心は痛んだ。
でも、これでまたクラウドに会えるかもしれない。そう思うと元気が出てくる。
「けど…」
そう言ってエアリスはセフィロス。と呟く。
このゲームにセフィロスがいる。クラウドはどうするのだろう。
自分を殺した相手だったが不思議とセフィロスのことを憎いとは思わなかった。
ーだって、あの人もかわいそうな人だから。
「……さてと、行こうかな」
まるで散歩に出かけるかのようにそう言った。ただ、その傍らには少女に不釣り合いな大きな槍があったが。
−−数時間後−−
「…意外に粘るな」
カインは、思わずそう呟いていた。
彼の前で、大きな槍に身をあずける様にして立っている少女は、大きく息を荒げながらも、その目にはまだ光が残っていた。
(…何か策でもあるのか?今までの様子だと、こいつは魔法は使えないようだ。
支給武器はいま持っている槍だけのはず………しかし…)
大きな槍を持った少女と遭遇したのはほんの数分前のこと。
支給された武器が、よく判らない光る玉だけだったカインは、槍を手に入れるべく少女に交渉を持ちかけた。
「お前が勝ったらこの玉をやる。俺が勝ったらその槍をよこせ」
少女は乗り気ではなかったが、カインは構わず攻撃を始めた。
武器こそ無いものの、驚異的なジャンプ力を駆使した空中戦法、
そして少女がまったく槍を扱えないことで、一方的に戦いを進めていた。
何かを狙っている。少女の様子からは、そうとしか思えなかった。
だが、あのような体で何ができるものか。
(ふっ…何を迷っている。相手はもう瀕死だ。とどめを刺してやれ)
カインは意を決すると、少女にとどめを刺すべく、大きく飛び上がった。
その瞬間、少女は槍を構えた。そして…
『邪気封印!』
「なっ!?」
眩い光がカインを包んだ。直後、体の自由が利かなくなったカインは、バランスを崩して地面に落下した。
「…ぐはっ!」
打ち所が悪かったのか、どうやら右腕を骨折したようだ。しかも、今の光のせいか、身動き一つできない。
「ぐっ……どうやら、俺の負けのようだな…」
リミット技 『邪気封印』
敵の動きを封じるこの技で、エアリスは辛くもカインに勝利した。
エアリスはカインの服から光る玉――マテリアを取り出すと、持っている槍にはめた。
「…仕方ない、約束は約束だ。その玉はくれてやる」
吐き捨てるようにそう言うカインに、エアリスは無言で目をつぶると、なにやら祈りを始め…
「ケアルラ!」
再び光に包まれるカイン。
「この魔法は……それよりもなぜ…?」
魔法が使えるのなら、なぜ戦いの途中で使わなかったのか?
また、なぜ俺に回復を……
疑問の表情を浮かべるカインに、エアリスは一つ一つ説明をした。
「…だから、この「かいふく」のマテリアとマテリア穴のある武器がそろって、初めて魔法が使えるのよ」
「なるほどな…だがもう一つの質問にはまだ答えてないぜ」
「……うん、なんていうか……あんまりその、殺したりとか、したくないしね。それと…」
どう切り出していいか迷っていたエアリス。
「しばらくの間でいいから、一緒に行動してくれない?」
「……え?」
「ほら、私は槍を使えないし、あなたも回復役がいると少しは助かると思うけど」
「…………そうだな。俺としては武器が使えるのは願ったりだし、殺されても仕方ないとこを、回復までしてもらったからな」
「じゃあ…」
「あぁ、しばらくは付き合おう。俺はカインだ」
「…ありがとう。私はエアリスよ。よろしく、カイン」
こうして一時的にともに行動することにした二人。エアリスの提案で、クラウドとの合流を図ることにする。
【エアリス:生存確認 所持武器:マテリア(回復) 現在位置:西部山岳地帯
行動方針:クラウドを探す 第二行動方針:戦闘は避けたい】
【カイン:生存確認 所持武器:ビーナスゴスペル(槍)、現在位置:西部山岳地帯
行動方針:クラウドを探す 第二行動方針:自衛なら戦う】