[No.9]
信用しよう
【登場人物】
アルス、ティーダ
まるで、御伽噺に出てくるかのような中世的な街路を、ティーダは陰鬱な気持ちで、あても無く彷徨い歩いていた。
「はぁ〜……ワケわかんねえッス。どーしてこんな目にあうかなぁ〜……」
顔を上げて、空を眺めた。
今のティーダの気持ちとは裏腹に、空は一片の雲さえ無く、どこまでも青く透き通っていた。
遠くに見える荘厳な城は、その威厳を以って、城下を俯瞰しているようでさえある。
――『アリアハン』。
地図によると、それがこの王国の名前らしかった。全く人気の無い、異様な街。
(やっぱ、この国の人も、ゾーマとかいう奴に消されちゃったのかな……)
自分が生き残るために、罪の無い人間を殺すことなんて出来ない、そうティーダは思っていた。
(どこかに隠れて、そのままじっとしてよう……)
街の中心部から、遠ざかるよう遠ざかるよう、ティーダは歩いた。
道はやがて、入り口が壁に面した、古い一軒家の前でプツリと途切れた。
(ここでいいか……)
ティーダはゆっくりと、そのドアを開いた。
アルスは構えを解き、武器を袋の中へとしまった。この『訪問者』からは、微塵の殺気も感じられない。
『訪問者』が階段を上がってくる。相手を警戒させないように両手を挙げ、階段から離れた位置に立つ。
階段を上がってきたティーダと目が合った。一瞬の沈黙が、二人の間を流れる。先に口を開いたのはアルスだった。
「僕はアルス、君に敵意はない。話を聞いて欲しい。今は人間同士で、殺し合いをしている場合なんかじゃない」
心臓が早鐘を打つ。ティーダは警戒していた。
(誰だよ……アンタ)
アルスの目を見つめる。とても悪人には見えない――だが。
アルスは「動かないで」と一言だけ言い、超スローな動きで、袋の中から鋼の剣を取り出し、ティーダの足元に滑らせてからこう言った。
「敵意はないんだ」
ティーダは、彼を信用することにした。全てを警戒していたって始まらない。
彼を見習い、ゆっくりと袋から『いかずちの杖』を取り出し、彼の足元へと滑らせた。
「オレも敵意なんて……ないッス!」
ティーダが仲間に加わった!
「アルス、ティーダ」
【所持武器:鋼の剣、いかずちの杖
現在位置:アリアハン南西アルス宅
行動方針:仲間を集め、何らかの方法でサバイバルを中止する(ゾーマを倒す)】