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[No.1]
 開幕
【登場人物】
テリー、ケフカ、ビビ

テリーはまだハッキリとしない頭を振った。
そこは見慣れぬ大広間だった。
「ここは、どこだ?」
掠れた声しか出なかった。
だが実際に声に出したことで、停止していた思考が少なからず動き出す。
――なぜ俺はここにいる?こんなところで何をしてるんだ?
そして何よりも大事なことを思い出し、目を見開く。
――姉さんは?
とっさに辺りを見回す。

そこにいるのは自分だけではなかった。
ある者は既に立ち上がり、ある者はまだ朦朧としている意識と格闘し、
そしてある者はまだ倒れていた。
ざっと50人以上はいる。
見慣れない連中ばかりだ。
不意に、一際目立つ金髪の女性が目に入った。
まっすぐに美しい金髪を伸ばした女性……
――姉さん!
大声で呼び、条件反射のように姉に近寄る……はずだった。

広間に耳障りな笑い声が響いた。
一瞬、テリーの動きが止まり、声がした方向を油断無く睨み付ける。
そしていつでも剣を抜けるように構えた。
……が、愛用していた雷鳴の剣はあるべきところになかった。
気付けば身を守る物も一つとして身につけていなかった。
周りの人間も動揺しているのがわかる。
まだ眠っていた人間も、先程の奇声に目を覚ましたようだ。
「ようこそしょくん」

おどけているとしか思えない道化師のような風貌の姿を現し、
しかもおどけているとしか思えない声で、ケフカは言った。
「みなさんを招待するためにふさわしい言葉を一生懸命考えていましたよ」
――なんだこいつは。
「さて……」
ケフカは一呼吸おいて、得意げに叫んだ。
「お前らにはこれから殺し合いをしてもらう!!」

――何を言ってるんだ。
広間は途端にざわついた。
「コラ!話はまだ終わってないんだ!静かにしないとぼくちん怒るよ!」
ケフカは、急にうるさくなり静まらない連中にヤキモキしているようだ。
ちょこまかと走り回り、頻繁に両手をあげて威嚇のポーズをとっている。
――付き合ってられるか。今のうちに。
テリーは姉の元へ近寄ろうとした。

「ケフカ!ふざけたマネはよせ!お前の茶番など……」
一際大きな声で、垂れ耳なのか髪なのか帽子なのかわからない頭をした老人が叫んだ。
だがその言葉の途中であえなく老人は倒れた。
幾人かの女性の悲鳴が響く。
何が起こったのかわからない者も多かったかもしれない。
だがテリーは見た。
――なんだ、あの禍々しい翼は!
破壊の翼……ケフカから突如として暗黒の翼が現れ、老人を襲った。
「ぼくちんは恐いんだぞ!皇帝だからって許さない!」
先程とは打って変わって、広間は水を打ったように静まりかえった。
「言うことを聞かない者にはお仕置きだ。みんなは話を聞く気になったかな?」
――こいつは……やばいやつだ!

再び落ち着き、優越感に浸りながらケフカは続ける。
「話は簡単だよ。最後の一人になるまで殺し合って、生き残った者だけが助かる。
でもおかしなマネはしようと思わない方がいいよ。みんなの首に付いてるそれ、なんでしょう?」
テリーは首のあたりに手をやってみた。
いつの間にこんな物が付いていたのか、冷たい感触が手に伝わる。
広間は再びざわつきそうになるが、すぐに静かになった。
「変なことしようとしたらその首輪がボンッ!!だよ。気を付けてね。
細かいルールは他にもあるんだけど、それはこれからみんなが飛ばされるところで
聞くことになるだろうからぼくちんからはこれくらいさ。
さて、質問のある人はいるかな?」
大袈裟な身振りとともにケフカが言った。

一通りしゃべり終わったところで、年端もいかない麦わら帽子の子供が控えめに口を開いた。
「あ、あの……なんでボク達こんなことしなくちゃいけないの?
ボク、おうちに帰りたい」
「なんでだって?そんなことみんなは知る必要ないさ。
知ったところでほとんど死んじゃうんだからね!」
そう言い、耳障りな笑い声をあげる。
「でもおうちに帰りたいのかぁ。そいつはしょうがないね。自由にしてあげよう」
「ホントに?!」
嬉しそうに喜ぶその子供を見ながら、ケフカは何かスイッチを押した。
途端に子供に付いた首輪からピーピーと音が鳴り出した。
子供は何が起ころうとしているのかわからない。
しかし、これで自由になれると信じて疑わなかった。
首輪の音は次第に早くなっていく……

ボンッ!!
子供の首に付いていた首輪がはじけ飛んだ。
首輪と同様、その子供も原形をとどめないほどになっていた。
耳障りな笑い声とともにケフカが言う。
「おうちに帰りたいなんてつまんないこと言っちゃうやつはこうだ!
わかってくれたかな?」
周りの者はまだ何が起こっているのか把握しきっていない者も多いだろう。
だが、テリーは理解していた。
殺し合いをしてもらう……嘘でも冗談でも無い、そして、夢なんかでもない。

そして……

逃げられない。

「ビビ!!」
誰かの叫び声が聞こえた。
尻尾の生えた金髪の少年が、先程まで子供だった物へと近寄る。
少年は体を震わせ、それを眺めていたかと思うと突如ケフカを睨み付け、突進した。
「てめぇ!ふざけやがって!よくもビビを!!」
二人はよほど親しい仲だったのか、よせばいいものを、あんな光景を見せられて
我慢などできなくなっていた少年はほとんど丸腰でケフカに襲いかかる。

――バカが。
テリーはその光景を冷ややかな目で見ていた。
ケフカは襲いかかった来た少年を見ながら例のスイッチに手を伸ばそうとしたが、
何かに気付き、意外にも嫌らしい言葉を吐くだけだった。
「みんなと遊んでいるのもここまでみたいだよ」
ケフカがそう言うと、広間の空間が突如歪み始める。
ケフカはあの耳障りな笑い声の後、言葉を続けた。
「さぁみんな、これから楽しませてもらうよ。
ぼくちんをガッカリさせないように頑張るんだよ」
――姉さん!
ケフカの言葉など気にもとめずに、テリーは空間の歪みの中でもがいていた。
次第に空間の歪みは広がり、広間にいた者はその歪みに飲み込まれていった。
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