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[No.16]
 愛しさと切なさと下心と、Featuringピンク隊
【登場人物】
クッキー、ベアトリクス

もうどれくらい走ったのだろう?
クッキーは、まわりに人が居ないのを確認すると、ようやく小休止して息を整える。

「なんなんだよ、もう」
何が何だか正直理解できない、どうしてこんなことをしなければならない?
だが、泣き言も言ってはいられない、自分にはやらなければ、伝えなければならないことがある。
これが夢ではなく現実ならば、なおのこと。
底抜けのお人よしのマイヤーのことも心配だったが…(ああ、どうか悪い人に騙されていませんように)
それよりも彼には大切なことがあった。

(リンダ…)
クッキーはザックからハンカチを取り出すと、汗を拭きながら心の中に一人の少女の姿を思い描く。
(あの日、ムーンぺタの街で出会ったあの時から僕は君のことが…)

そう、どんなに強い敵がいても、どんなに険しいダンジョンがあっても、彼女が自分の後ろにいる。
そう思っただけで自分の中の臆病さが勇気に変わっていくのが自分でも理解できた。
この胸の想いを打ち明けたい、叶うならずっとそばにいて欲しいと何度眠れぬ夜を過ごしたことか。

だが、自分と彼女の立場を考えると、それは封印しなければならぬ禁断の想いだった。
もし想いを打ち明けたとして、人々はどう思う?
サマルトリアの王子は領土欲しさに亡国の姫を篭絡しようとしたと、後ろ指を刺す事になるだろう、
さらに人々にとどまらず、ローレシアやデルコンダル、さらにそのほかの独立都市も黙っていないはず。
一つ間違えれば、再び戦乱の世が始まることも充分考えられる。

しかし、それでもこうなってしまえば何としても彼女にこの想いを伝えたい。
生きて出会えるかどうかも定かでもないのだが、それでも何か支えがないと崩れてしまいそうだ。
「もう限界だよ…好きなんだ」
喘ぐように呟くと、彼は一向に止まらない汗をさらに拭き取ろうとするが、妙なことに気がつく。
でも何か変だなこのハンカチ、やたらと大きいしそれにいい匂いがする…って!!
「わっ、わわわっ」
なんと、彼が手に持っていたのはハンカチではなくピンクのレオタードだったのである。

「こういうの見た事はあるけど…持つのは初めてだなあ」
胸の鼓動を抑さえながら、彼には興味心身でレオタードを広げたり、かざしたりして観察を始める。

見たところレオタードはかなり使いこまれており、あちこち傷んでいるようにみえたが、
それがクッキーのいらぬ妄想を余計に掻きたてる、が、かなり強力な防御魔法がかかっているのも、
彼には理解できる、おそらく防御力は下手な鎧より上だろう。
腰の部分にはMiと丁寧に刺繍がしてある、持ち主の頭文字のようだ。

こんなのをリンダが着てくれたら…と、そこでクッキーは一瞬芽生えた邪な感情をあわてて振り払う
「こんな時に何を考えてるんだ!僕は!」
「こんなこと考えている場合じゃないや、先を急がないと」
懸命に自分を取り繕いながら、夜道を歩くクッキー、しかしそれでもレオタードはしっかりと、
ザックの中に確保していた。

そしてその頃、島の正反対では。
「なんだ!この支給品は、バカにするのもほどがある!」
ベアトリクスは岩場にもたれかかりながら悪態をつく、それも無理は無い、ザックの中から出てきたのは
やはりクッキーと同じく、きわどいピンクのレオタードだったのだから。

こちらもクッキーが持っているものと同じく、やはり使いこまれてこそいるが、その分とても丁寧に手入れされており、
傷みはほとんどなく、腰の部分にはMaと荒いタッチで刺繍が施されていた。

ベアトリクスはレオタードを海に向かって投げ捨てようとしたが、一瞬躊躇する。
「しかし…スタイナーも、もしかするとこういうのが好きなのだろうか?…いや、まさか…だが、
 ガーネット様もこういう類のものを実はお持ちになられているようだし…うむむ、しかし
 こんなデザインではお腹が冷えてしまうぞ」

結局、彼女はレオタードを丁寧にたたんでザックの中に片付けると、やや頬を赤らめてその場を後にするのだった。
【クッキー 所持武器:ピンクのレオタード(ミネア用) 現在位置:J-19(南地区スタート)
第一行動方針:リンダを探す 】

【ベアトリクス 所持武器:ピンクのレオタード(マーニャ用) 現在位置:K-03海岸沿い
 (北地区スタート)第一行動方針:未定】

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