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[No.22]
 暗殺者と少女
【登場人物】
シャドウ、クルル

最東端の海岸、X-13。
シャドウは静かに海辺を見ていた。
己は暗殺者、このゲームに参加するのは容易い、優勝も可能だろう。

だが、シャドウの脳裏によぎるのは愛くるしい顔立ちの少女。
少女が、もし、殺されるとしたら……
少女の顔が歪む、血に染まる、ニヤリと笑う名も知らぬ参加者。
シャドウは頭を振った。
その考えを捨てるために。

――ガサッ!
突如背後の茂みから音がし、シャドウは咄嗟に音の方へと飛ぶ、ほんの一瞬の出来事。
シャドウは物音を立てた者の口を塞ぐ、首へと手をかけ、ビクリとした。
あどけない少女、可愛らしい金色のポニーテール。
瞳には涙を浮かべ、必死に首を横に振っている。
「動くな、死にたいのか?」
その声を聞くとポニーテールの少女はギクリとし、静かになる。
「よし、お前が何もしなければ俺も何もしない。
 お前はその、ピンクの帽子をかぶった女を見なかったか?」
少女は首を横に振る。
シャドウはため息をつき、少女の口を塞いでいた手と首にまわした手を静かにどけてやった。
「っはぁ……」
「すまなかったな、この闘い、疑らねば殺される」
シャドウは茂みから顔を覗かせ、付近を確認する、どうやら他の参加者は気づいていないらしい。
「私、こんな闘いしたくない。
 おじいちゃんに早く会いたい……」
少女は肩を震わせ、泣きながらそう言った。
しかし、その願いはもう永遠に叶う事は無いということを少女はまだ知らない。
シャドウは一瞬戸惑いを見せ、再び周囲を警戒した。

「泣くな、泣いて解決するような問題ではない」
(らしくない、実に俺らしくない。)
「おじさん、私どうしたらいいの?怖い、私……」
「じいさんに会いたいというのならお前の足で歩いて探して会え。
 この闘いでは誰も助けはしてくれない、皆お前を殺そうとする、そう考えろ」
(これもらしくない、俺はあの日、人間の感情を全て捨てたはずなのに。)
「でも、おじさんは私を殺さないでくれた」
「ほんのきまぐれだ、殺そうと思えばいつでも殺せる」
しばしの沈黙、シャドウは西を見た。
暗くて常人にはよく見えないが、暗殺者であるシャドウにはよく見える。
見える範囲には人はいない、行くならば今……

シャドウは駆けた、暗闇の平原を、ただ黙々と。
――ススススススス……
暗殺者独特の足音のしない走り方、そう、足音はしない。
――スススススドッドッド……
ならば、この足音はなんだ?シャドウは振り向く。
そこには、いかにもな忍者ルックをした、先ほどのポニーテールの少女。
「お前……!」
「おじさん、お願い、私を連れて行って!おじさんなら信じられる!」
「お前のじいさんとやらは探さんぞ!」
「構わない!私だってどうせ何処に行こうか迷うだもん!
 それならおじさんと一緒に居たほうがいい!」
シャドウは走る速度を上げる、少女も負けじと速度を上げる。
「おじさん!お願い!」
「………そのおじさんというのはやめろ、それと足音を立てるな!」
シャドウは立ち止まり、少女を止める。
気づけば橋の見える地点、無我夢中で走っていた。
「わかった、私、クルル」
「俺は……シャドウだ」
少女―クルルは静かに笑った。
【シャドウ 支給品:? 現在位置:T-13(出発地点東) 行動方針:リルムを探す】
【クルル(ジョブ:忍者) 支給品:? 現在位置:T-13(出発地点東) 行動方針:ガラフや仲間を探す】

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