LIST ▽DOWN
[No.29]
 小さな目撃者
【登場人物】
リルム

一人の少女が森の中を走っていた。少女の名前はリルム。
彼女の表情は恐怖に歪み、体のあちこちにはどこかに引っ掛けたのか細かな擦り傷が
無数についていた。それでも彼女は自分の傷には気付いていないようだった。

彼女がパニックを起こしたのも無理はない。
ビアンカがアニーを殺した現場をリルムは目撃してしまったのだ。
祠を出てとりあえず森に逃げ込んで、微かだが聞こえてくる優しい声の会話に
リルムは吸い寄せられるようにふらふらと近づいていった。
そして二人を見つけたリルムは木の陰に隠れて、
話し合っていた二人をどんな人か見定めていた。

少女はまだ小さく、自分にはかなわないがなかなかの美少女だと思った。
女性は優しく、そして暖かい感じがして信用に足る人物だと思った。

この人達なら大丈夫だろうと思ったのも束の間、出て行こうと動き出した足が
女性から噴き出した負の感情に動きを止めた。
それにまったく気付いていない少女。逃げて、と叫びたかったが、
口の中が乾いて声が出ない。
そして女性が誰かの名前を叫んで―――。
鈍い音を背後に聞きながら、女性の声に弾かれたようにリルムは駆け出した。

(もういや。悪い夢なら早く覚めてよ。おじいちゃん、おじいちゃん、
 どこにいるの? 助けて、助けて、タスケテ、タスケ―――)
突然リルムの足元から地面の感触が消えた。
束の間の浮遊感、そして落下。耳に風を切る音が響く。
絶叫が森中に響く。リルム自身には聞こえていなかったが。
不意に見えた星空がぐんぐん小さくなっていき、リルムは意識を失った。
【リルム(気絶) 所持品:?
 現在位置:P-4 ?洞窟内部
 行動方針:?】
※北出発です

[Next] [Back] □LIST △TOP


小さな目撃者
について管理人にメールする
件名:(選択)
内容: