LIST ▽DOWN
[No.3]
 幸か不幸か向上心
【登場人物】
テリー

今は祠と思われる部屋の中。
テリーは今起こっていることが夢ではなく現実だと理解した。
はざまの世界から突然別の世界へ、こういうこともありなんだろうと、深くは考えなかった。

背筋を伸ばしたまま、直立不動でテリーは呼ばれるのを待った。
「まずはテリー君、だね」
一番乗りというのも悪い気はしない。
兵士に呼ばれたので進みだした。

20人ほど参加者が残っていたが、自分を意識する視線をろくに感じなかった。
残りの者は皆、自分のことで頭が一杯なのだろうが、それはテリーも同じことだ。
もっとも、多少思うことは違っている。
他の連中は、どうやって生き延びようか、どうすればゲームから抜け出せるか、
殺してもいい奴は誰か、
自分が死なずに済む方法を考えている。
テリーの場合は自分を磨くことで頭がいっぱいなのだ。

この極限状況はいい経験になる。
敵は大勢いる、戦闘には不自由しない。力をつけるチャンスである。
もちろん無闇に殺し合いをする気はない。敵は大半が人間なのだから。
しかし相手が望めば、いや相手から仕掛けてきたら、こちらも容赦はしないという決意は固めた。

雑嚢を左手に提げ、テリーは部屋を出た。
向かう通路の先には、闇が続いていた。
夜遊びとはまたふざけている。
ようやくあの暗いじめじめとした部屋から抜けて、明るい陽射しの下に出られると思ったのに。
テリーは口の中で罵った。
途中、支給品の中身が気になり、袋の外から手触りの感触を確かめる。形状から盾らしいことがわかった。
とりあえずの目的は武器を調達することにきめた。一つと言わず、武器はいくつあっても困らないだろう。

(姉さんは……)
大広間にいたのは姉に間違いなかった。ほっそりとした背中にまばゆい金色の髪の印象は
間違いなくミレーユだ。
本当なら、姉のことを優先したかった。
まっしぐらに目指して、手元に引き寄せたかった。
それが、今は闘いの方に気が引かれている。
何故なのかは、本能にちかいものがそうさせるのだろうと、思うしかなかった。
だが、姉を間近に見つけたら、また別の想いに自分は引かれるのだろう、とも思いはした。

テリーは渡されたザックをあけた。中には確かに盾が入っていた。
小型で、表面は光をよく反射しそうな艶やかさがあり、見たことのない文字が浮かび上がっていた。
おそらく魔法の品だろう。
盾には紐が備え付けられていたので、紐を首にかけ盾を背中に背負い込んだ。
テリーは通路を突き進み、闇夜の世界に躍り出た。
【テリー 現在位置 祠から出て北へ(現在T−9)
 所持品 山彦の盾(魔法の類いをはねかえす効果) 
 行動目的:適当な相手から所持品を奪う】

[Next] [Back] □LIST △TOP


幸か不幸か向上心
について管理人にメールする
件名:(選択)
内容: