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[No.37]
 盗賊のプライド
【登場人物】
セシル、バコタ

その男はいつのまにか、僕の隣を歩いていた。
「全く、何であんなイカレた男なんかに命令されなくちゃいけないんでしょうね。
 こんな首輪までつけられて……私達は犬じゃないんですよ、ねぇ?」
詩人風の身なりをした男は、べらべらとまくしたてる。
敵意はないらしい。それ以前に、腰に吊るした剣を抜こうとすらしていない。
緊張感というものがないのだろうか? それでなくても、二人の人間が目の前で殺されているのに。

「私、ああいうタイプが一番嫌いなんですよ。
 武力や権力を傘に来て威張るような、低俗な輩が」
そりゃあ、僕だって好きじゃない。だが、それがどうしたというのだ。
「あれだったらまだ、ガーデンブルクの女性陣の方が可愛げがありますよ。
 気位の高さには辟易しますが……まぁ、見た目も美しい方々が多いだけマシです」
それはよかったですね。けど、僕には関係の無い話でしょう。残念ですけど。
愚痴を言いたいだけなら、僕ではなく他の方を見つけてください。
僕がそう言おうとした時だ。
「……ああ、すみません。前置きが長過ぎたようですね。
ともかく、私は決心したのですよ」
……僕の表情を読み取ったのか、男は咳払いをしながらこう言った。
そして一旦言葉を切り、芝居っ気たっぷりな身振りと共に微笑を浮かべた。
「私はね。あのいけ好かない連中から、このゲームを『盗んでやる』ことにしたんです」

「は?」
その言葉の意味が理解できなかった僕は、ポカンと口をあけた。
しかし彼は、僕に構わず言葉を続ける。
「私にも私なりの――盗賊としてのプライドがあるんですよ。
 あんな連中の言いなりになるなど、盗賊バコタの名折れです。
 私たちの首輪を盗り、ゲームそのものを破壊する――
 無論、私一人では無理でしょうね。けれど有能な協力者がいれば話は別です。
 ……実を言いますとね、貴方には出発前から目をつけていたんですよ」
バコタと名乗った男は、ニヤリと笑った。
「これでも私は、人を見抜く目はあるつもりですよ。
 その落ちつき様、頭の回転、身のこなし……全ての要素において、貴方は合格ですよ。 
 貴方ほどの人物に協力していただければ、私の目的も実現に近づきます」
そして彼は、僕に右手を差し出した。
「――セシルさん。私と手を組みませんか? このゲームを壊し、脱出するために」
【セシル:所持アイテム:? 現在位置:S−7】
 第一行動方針:?
【バコタ:所持アイテム:アイスブランド 現在位置:S−7】
 第一行動方針:協力者を集める
 最終行動方針:首輪を外し、ゲームを破壊する

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