[No.41]
悲しみのアンジェロ
【登場人物】
ルールー
「ワンワン」
「はいはい分かったらもう少しゆっくりね」
ルールーは前方を走る犬にせかされながら先へと進む。
まさかカバンを開けた途端に、犬が飛び出してくるとは思わなかった。
首輪を見るとアンジェロと書いてある、これが支給品なのだろうか…だとすれば人を馬鹿にしている。
最初は無視して行こうと思ったのだが声と仕草が何と無く哀れを誘うような気がしたし、良心も痛んだので
結局、連れて行く事にしたのだ。
そして島の中心近くの森に入った途端、いきなりアンジェロが猛然と走り出したのだった。
そのスピードは森が深くなればなるほど増していく、ルールーはもはや見失わないように後を追うのが、
やっとだった。
と、そこで唐突にアンジェロが立ち止まる、そしてこれまで聞いたことも無いような哀切な声が、
その口から漏れる。
そこにいた、いやあったのは、若い娘の死体だった、その死体の傍らで鳴き続けるアンジェロ……
そう…この娘がお前の…、くぅ〜んと悲しげに鳴くアンジェロの背中を撫でてやりながら、
ルールーもまた娘の冥福を祈った。
が、いつまでも悲しんでいるわけにもいかない、ルールーは素早く状況を調べ始める。
死体はまだ温もりが残っている、まだそれほど時間が経過しているわけではなさそうだ。
「お前の御主人を殺した奴は、どっちに行ったかわかる?」
アンジェロはくんくんと鼻を鳴らしていたが、やがて北の方角に向かってわんと鳴く。
「そう…そっちね」
一方のルールーは少女の手に握られている布切れが気になった、表が赤と裏が青のマントか何かの切れ端のようだ。
殺した相手が身につけていたものか?
これも一応アンジェロに嗅がせてみる、アンジェロは一応北の方角を向いたものの、
くるくると周囲をうろつきながら、まるで答えが見つからないようなそぶりを見せている。
(なるほど…確かに身にはつけていたけど、本来の持ち主は別にいるということ?)
ありえない話ではない、むしろそう考えるのが妥当だろう、そういえば自分の愛用してる、
ぬいぐるみは今、誰が手にしているのだろうか?
とにかく何時までも寒空の下に置いておくのは可哀相だ、ルールーは早速弔いの準備を始めた。
それからしばらくして、なんとか墓を作り終えたルールーは、墓の前から動こうとしない
アンジェロの顔を両手で抱え、その瞳を見つめながら言い聞かせる。
「私は南に向かうわ…他にやらないといけないことがあるから、だから私はあなたの御主人の敵は討てない
でも、あなたはあなたの道を行けばいい、北に向かって敵を討つのも、ここでお墓を守るのも」
それだけを言うと、ルールーは南に向かい進んでいく。
そして、名残惜しげに主人に最後の別れを済ませると、アンジェロもまたルールーの後に続いた。
【ルールー:所持品:アンジェロ 炎のマントの切れ端 現在位置:Q-11 目的:仲間との合流】
東スタートです。