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[No.42]
 望まぬ契りを交わすのですか?
【登場人物】
バッツ、ギルガメッシュ、セリス

――愛しのあなたは 遠いところへ
――色あせぬ永久の愛 誓ったばかりに
――悲しい時にも 辛い時にも
――空に降るあの星を あなたと想い

南方に位置する海岸で星空を見上げ、セリスはいつかの劇場を思い浮かべていた。
思えば、ロックに想いを抱き始めたのはあの時だった。
セリスは目を閉じ、愛しい男の優しげな笑顔を思い浮かべる。

私はいままで十分幸せだったと、セリスは思い出を噛み締める。
ガストラの野心の道具でしかなかった自分が、恋という幸福を得ることができたのは、ロックのお陰だ。
だからこそ、彼に恩返しをしたい。
その思いから、セリスはゲームに乗った。
自分が生き残るためではなく、ロックを生き残らせるために。

セリスは近づいてくる男の声に気付き、防砂林の一本に身を隠す。
歩いてきたのは、2人だった。
思案したのち、静かに男たちの背後に回りこむ。
潮騒が彼女の足音を包み込み、労無く魔法射程距離まで近づくことに成功。
「ライブラ、ライブラ」と、セリスは小声で2度魔法を唱える。

  ※名前:バッツ ジョブ:シーフ 体力:低め 魔法:無し 弱点:無し……
  ※名前:ギルガメッシュ 体力:多い 魔法:プロテス、ブリンク、シェル 弱点:無し……

セリスはしばし情報を咀嚼、 勝算を十二分に感じつつ、剣を持つギルガメッシュに向かい唱えた。
…バーサク。

「…どうしたギルガメッシュ?」
「なんか、急に体がカッカしてきてよ…なんかイライラする、スカッとしてえぜ、スカッと」
「ストレスにやられたのか? お前、見た目と違って結構繊細なのな」

海岸を西へ、半島の先にある塔を目指して、バッツとギルガメッシュは歩みを進めていた。
先のエクスデス戦では敵味方にありながら、妙に気になる相手として意識しあってきた2人は
もともとウマが合う性格だったらしく、既に旧友のような気安さでお互いに接していた。

「……フュ」
ここちよい海風が止まり、潮が凪いだ瞬間、バッツは背後で小さな女性の声を聞いた気がした。
誰かがいる。
バッツは、相棒に注意を促す為に肩に手を置いた、その瞬間。
バッツの肘から先が血飛沫を上げ、空中に舞った。

ギルガメッシュが振り上げた鋼鉄の剣に、鮮血がからんでいた。
バッツは肘を押さえ、よろめく。
「ギギギギ」
口から泡を吹き、目を血走らせ、ギルガメッシュはバッツに踊りかかる。
もんどりうって転がるバッツ、ジョブがシーフであったことが幸いし、
すんでのところでギルガメッシュの飛び込み袈裟斬りを回避できた。
バッツは砂まみれになりながらシーフの妙技、「とんずら」を発動。
北に向かって駆けた。

「ガウ?グウウウウ…」
攻撃対象をロストした狂乱のギルガメッシュは、しかたなく目的を変更、
水際に戯れるフナムシを踏み潰しにかかった。

バッツは防砂林の一本に背中を預け、破り裂いた上着で止血のため右肘上部を縛り上げる。
白魔道士のジョブ経験のない彼にとって、それが出来うる最大の治療だった。
「ギルガメッシュは正気を失っていた…気付かないところで俺たちは敵に攻撃を受けていたんだ。
 コンフユとか、バーサクとか…その手のアイテムとか…
 クソッ、迂闊だった…」
バッツはそこではっと気付く、自分に向けて伸びている、妖しく細長い影に。

バッツが顔を上げると、目の前10Mほどの場所に、月の光を浴びてつややかな髪を輝かす、
肌の白い憂い顔のセリスがいた。
バッツはセリスを見て、「綺麗だ…」と漏らした。

しかし、彼女が石を手にして自分に歩み寄って来るに至って、正気を取り戻す。
敵はコイツだ!!
バッツはとっさに立ち上がり逃げようとするが、失血による貧血ですぐさまどうと倒れる。
セリスは静々と近づいてくる。

「な、なああんた、冷静になろう、俺たちが戦う意味がどこにある、
 恐怖で自分を見失うな、こんな馬鹿げたことを企画するやつらだぞ、
 最後に生き残ったヤツが本当に無事に帰されると思っているのか、俺は思わない」
体の自由が利かないことを悟ったバッツは、ここを生き延びるべく、
矢継ぎ早にセリスに言葉をかける。
しかしセリスは言葉を返さず、無表情のまま石を振り上げ、バッツに振り下ろした。
がつ、
バッツの額の皮が裂けた。

振り下ろす、がつ、振り下ろす、がつ、振り下ろす、がつ。
バッツは血みどろになりながら、薄れゆく意識の中でバッグを漁った。
そして最後の賭け、支給された薬物のビンを取り出すと、セリスに向かってそれを叩きつけ。

そこで、意識が途絶えた。

「……俺、何やってるんだ?」
ギルガメッシュが我に返り、ストンピングを止めた。
足下にはイヤになるぐらいグロテスクなフナムシの死体の山が、体液の臭いを撒き散らしている。
「げええええ、なんだ、こりゃあ!?」
ギルガメッシュはおえっ、と嗚咽を一つ漏らし、小波で足を洗う。

その爪先がが、なにか柔らかくて固いものを感じたので、ギルガメッシュはそれを注視する。
自ら切断した、バッツの利き腕が水にふやけて漂っていた。
「バッツ!?」
そういえば先ほどから妙に静かだったのは、あいつがいなかったからだと彼は冷や汗と共に気付く。
ようやく意識が完全に覚醒した。

「バッツっ!!!」
ギルガメッシュは相棒の名を叫び、姿を探す。
彼はすぐに砂に染み込むまだむうと臭気を放つにドス赤い血痕を発見、北に点々と伸びるそれを辿る。
「生きててくれ……」

防砂林まで一気に駆けたギルガメッシュがそこに見たもの。
それは、苦しげに汗をかきながらも、安らかな表情で仰向けになって眠っているバッツと、
彼を膝枕し、手に持った「ヒールロッド」でなでるようにバッツをこつこつと叩く、
優しげな眼差しのセリスの姿だった。

「あれ? ええと…なんだ」
予想外の絵ヅラに言葉うギルガメッシュが、なんとか搾り出した言葉はこれだった。
「あんた…誰?」
セリスは恥ずかしげに頬を染め、問いに答えた。
「バッツさんを心より愛する女です」

セリスの頭に、バンダナを巻いた青年の寂しげな笑顔が一瞬浮かび、そして消えた。
                   ――愛しのあなたは遠いところへ。
【バッツ/ギルガメッシュ 所持アイテム:鋼鉄の剣 現在位置:H-20 防砂林】
 第一行動方針:バッツの回復待ち
 第二行動方針:ファリス、レナ、クルル、ガラフとの合流(さしあたって塔へ向かう)
【セリス 所持アイテム:ヒールロッド 現在位置:H-20 防砂林 】
 第一行動方針:バッツに尽くし、従う

 ※バッツ、右腕(利き手)喪失。武器は殆ど扱えない。HPかなりヤバ目。
  時間をかければヒールロッドである程度までは回復する。
 ※セリスのホレ薬はエスナ等の回復魔法では回復せず。スタート位置は南。

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