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[No.48]
 未知との遭遇
【登場人物】
ケット・シー、アーロン

「はぁ〜〜〜。どないしよ…ホンマに…」
南の祠から東へいったところにある海岸。
大小の岩が乱立する殺風景なソコに一匹のネコのぬいぐるみが佇んでいた。
彼は海岸に一番近い岩の下に座り込んでぼんやりと海を見つめていた。
いや、岩に見えたソレは2M近い巨体をもつモーグリの人形だった。

「ユフィさん、僕に気付かないで行ってまうんやもんなぁ。どこ行ったんやろ…」
ユフィと同じく南の祠スタートだったケット・シー。
しかしユフィはいの一番に出発したのに対し、ケット・シーは20人中12番目。
待ち時間もあいまって祠を出たときには一時間以上も後だったのだ。
とりあえず適当に方向を決めて走ってきたが、もちろんユフィの姿は無かった。

「それになんや本体の僕も変なトコにおるし…」
出発の順番待ちの時、そしてついさっきも機械人形であるケット・シーを
操作しているリーブは、ケット・シーとのリンクを絶って本体の方の自分が
どうなっているか確認してみたのだが、なにやら扉も窓も無い牢屋のような
部屋に隔離されているようだ、という事しかわからなかった。
もちろん、そこにいる自分の首にも例の首輪が付いていたのだが。
「まあ、あれがどこなんか大体わかっとるんやけどな」
そう呟くとケット・シーは隣に佇んでいるデブモーグリを見上げた。

「おまけにメガホンも無いからこいつで攻撃することもできひんし」
ケット・シーという機械人形はもともと遊園地の占いマシーンだった。
詳しい事は企業秘密なので公表できないのだが、もともと付いていなかった
攻撃用のプログラムはメガホンを使わないと作動できないのだ
「…そこらへんに法螺貝でもうちあげられてへんかな」
ちなみに彼の支給品はごつくて重い大剣だった。
がんばってもネコの人形が持てるような代物ではないし、
力自慢のデブモーグリでも、これの手では剣を持つ事などできなかった。

「はぁ〜〜〜。どないしよ…ホンマに…」
何度同じ事をもらしただろうか。
朝が来ればただでさえ目立つデブモーグリのせいで下手に動く事はできないだろう。
もしもこのデブモーグリが破壊されたとしたら。
ネコの人形であるケット・シーとデブモーグリ。二つで一つのケット・シーなのだ。
片方が破壊されたらおそらくもう片方も…。

(ここでじっとしてても始まらへんしな。…夜の内に町へ……!!)
不意に真後ろで聞こえた砂を踏む足音に、ケット・シーは思考を中断させた。
(うそやろ? こんなに近寄るまで足音なんて…)
背後の人物から発せられるプレッシャーに、ケット・シーは動く事ができない。
すでに逃げられる距離ではない。戦う手段も無い。まさしく八方塞がりだった。
(どないしよ、どないしよ、どない……ぎゃあ!!)
声を出さなかったのは賞賛に値するだろう。
背後の人間はケット・シーの首の裏を掴み、持ち上げたのだ。

(…あかん。とてもやさしそうな人間にはみえへんわ)
正面を向けられたケット・シーは自分を持ち上げた人間を確認した。
確か自分より前に祠を出た男。
強面、グラサン、赤と黒の服にオールバック。とても希望は持てそうに無い。
「…ネコの人形か」
(ん? 僕を人形としかみてないんか?)
「ルールーならともかく、他のヤツがコレを掴まされたのは不運だったろうな」
(ルールー? かわいい名前やな。せやけど、ともかくってのはなんや?)
「…ユウナ…ティーダ…どこにいるんだ…」
(…そんなに悪い人でもなさそうやな。でもいまさら参加者ですなんて言えへんし…)

男は背負っていたザックをおろし、その口を開いた。
(なにをする気なんや? まさか…)
「とりあえず持っておくか」
(ちょっ、まってや、そんなに乱暴に入れられたら、
イタ、イタタタ、イタイって、そ、そんなムリヤリ…ああん)
 「…? 入らん…」
(あ、あかん…。このままやと…僕…こわれて……! あれは!!)

男の持っているザックの中。ケット・シーの目と鼻の先。
ケット・シーは右手を伸ばして『ソレ』を掴むと、男の手を振りほどき
砂浜へ前転する形で飛び込み距離を取ると、『ソレ』を口元に当てて叫んだ。
「モーグリ! 倒れるんや!」
「なに!」
完全に不意をつかれる形になり、しかも自分の背後の岩が動くとは思っていなかった
のだろう、男はあっさりモーグリにのしかかられて動けなくなってしまった。

「…貴様も参加者なのか」
激しい怒りと憤りを含んだ言葉。
「なにか言っときたい事でもあるんか?」
一方ケット・シーは余裕の表情で男を見下ろしていた。
「………」
男は何も言わず、ただきつく睨み付けているだけだった。
「…まあ、僕もあんな酷い目にあわせられたんやからな」
ケット・シーは冷徹な声で言い放つと、右手のメガホンを真上に上げた。
男はここまでか、と自分を殺す相手を呪わんばかりににらみつけた。

「…な!?」
「だからな、これでおあいこや」
男は驚嘆の声をあげた。モーグリが男の上から退き、戒めを解いたのだ。
「手、組まへんか? なんや悪い人やなさそうやし、僕も人を探してる途中やしな」
男は差し伸べられたネコの手を幻でも見たような目で見つめていた。
「僕はケット・シーちゅうんや。あんたは?」
「…アーロンだ」
【ケット・シー 現在位置:P-20 海岸
所持品:?大剣 レッドメガホン(あやつり、へんしん)
 第一行動方針:仲間を探す】

【アーロン 現在位置:P-20 海岸
 所持品:なし
 第一行動方針:仲間を探す】

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