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[No.40]
 汚れた英雄
【登場人物】
アリーナ、サマンサ

(あ…意識が遠くなってきた、もうだめかな?)
アリーナはずぶずぶと沼の中に身体を引きずりこまれながら、薄れ行く意識でばんやりと考えていた。
人影が見える…何だろう、お迎えかな?
「助けてあげてもいいですよ、ただし、私の言う事を聞いてくれれば、の話ですが」
助けてあげても、の言葉に反応したアリーナはわずかに顔を上げる、そこには魔法使いが立っていた。
「ナ…なーに」
震える声でアリーナは返す。
「1人、殺してもらいたい相手がいるのですよ…ふふふ」
魔法使いは自分の袖口をめくって二の腕をアリーナに見せる、その腕は醜い火傷の跡で覆われていた。

あの日…私たちはとある情報を元に魔物たちの本拠を叩くべく、山岳地帯を行軍していた。
が、その中腹で私たちの行く手は炎によって阻まれていた、そう罠だったのだ。
炎に追いたてられるるまま、逃げ惑う私たち、やがて谷間にかかるつり橋を見つけた。
あそこを渡れば逃れる事ができる。だが炎はすぐ後ろまで迫っている。
一行はつぎつぎとつり橋を渡る、あとは私だけ…しかしその時信じられない事態が起こった。
なんと自分のすぐ前にいた勇者が、密かに取り出したナイフでつり橋のロープを切ったのだ。

たしかに、私はあの時一行からは少し引き離されていた、私がつり橋を渡っている間に、
炎が飛び火しないとも限らない…だがそれだけではないだろう?
苦言を呈しまくる私を苦々しく思って、これをいい機会だと思ったのだろうか?
少なくともあの時の彼の目は、命が惜しいだけの目ではなかった。

(レオナのように、さっさと見切りをつけて離脱してればよかった)
そして私はがけっぷちで、かつての仲間であり親友である女武闘家のことを考えていた。
(アルスってなんかやなやつだよねー私の直感がつげているんだ、別に勇者だからえらいわけじゃ
 ないのにね)

数日後、私は救助されたのだが、その身体には2度と消えぬ火傷の跡が残った、もちろん心にも……。
麓に帰った私は熱烈な歓迎を受けた、なんでも身を呈して勇者をピンチから救ったことになってるらしい。
「いや〜よかったよかった!、生きていて本当に…ありがとうサマンサ!」
涙ながらに自分にすがりつくアルス、傍から見れば感動的な光景だったが…しかし。
「君も分かるよね?もし本当のことをばらしたりしたら…君だって英雄になりたいだろう?
 君はレオナと違って物分りがいいだろうから、ね」

耳打ちされた言葉に、私はは愕然とし、そして目の前の少年の真実の姿を悟った。
これまでも何人かの仲間が「名誉の死」を遂げているのだが、それが全て今のような状況だとしたら?
そして何よりその中には自分の友人も含まれていたのだ。
(許さない…絶対に)

「以上です、お分かりいただきましたか?聞いてます?」
アリーナには途中から聞こえていなかったようだ、彼女はもうすでに首まで沼にひきずりこまれつつあった。
「仕方ないですね、とりあえず海辺ででも、もう1度話すことにしましょうか」
サマンサはアリーナを担いでそのまま沼地を脱出していった。
【アリーナ(気絶)所持武器:無し 現在位置:M-19 毒沼 】
 第一行動方針:?   

【サマンサ 所持武器:リボン 現在位置:M-19 毒沼から海に移動 】
第一行動方針:アリーナの救助
第二行動方針:アルスを殺す

(レオナはこちらに登場している女武闘家の名前です)
(サマンサは南地区スタートです)

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