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[No.51]
 ギルガメッシュ強要
【登場人物】
バッツ、ギルガメッシュ、セリス

バッツが見知らぬ女に膝で抱かれているのを見れば、何が起こったか見当がつく。
「バッツ……使ったな」
女の足元に散らばっているビンの破片がそれを物語っていた。

ううむ、ギルガメッシュは唸った。
この近くに他の参加者の気配はない。
状況からして自分を惑わせたのはこの女だ。
バッツが腕を失ったのもこいつのせい。斬ったのは自分だろうがこいつのせいだ。
「あんただろう、俺に魔法をかけたのは」
ギルガメッシュは語気を強めて言った。

「セリス、です…。そう……私はあの時どうかしていた。バッツさんのご友人である貴方に
 私は邪悪な魔法をかけて操ろうとした。そ、その……私は、バッツさんを葬ろうとしたのです。
 愛しているのに……」
ギルガメッシュは嘲ってやりたくなった。
操られてるのはお前の方だ。どうせ薬の効き目が切れたらまた俺たちを襲うんだろ、と。
「それが今は改心してバッツのために懸命な介護か?
 おめでてーな」
「ええ、何も言い訳できません。悪いのは全て私です。だから私が責任を持ちます」
セリスはヒールロッドの動きを続けている。

自分勝手な言いぐさに聞こえたギルガメッシュは腹立たしさを覚えた。
「だったら、バッツの腕をつなげてくれねえか、セリスさんよ。
 そうしてくれりゃ文句は何もないんだ」
そう言ってギルガメッシュはザックの中から、細くて血色悪い標本のような腕を取り出した。
バッツの右腕だ。
それをセリスの手に掴ませた。
「できるよな」

静かな波の音が絶え間なく聞こえてくる。他には何も聞こえず、そこには無言の応酬があった。
セリスはバッツの腕を持ったまま、しばしギルガメッシュを上目使いで見ていた。
ギルガメッシュは腕組みしながら凝視している。
やれよ、ギルガメッシュは視線で促した。

セリスは意を決して膝で固定したバッツの右腕の付け根部分に、切断された右腕をあてがった。
肉と肉がせめぎ合う嫌な音がした。そのままつないだ部分を、ヒールロッドでこつこつと叩く。
無心に、布を繕う機械のように、セリスは叩き続ける。

あっ、セリスは小さな声をあげた。
バッツの腕はつながらず、また崩れて膝の上に転がったのだった。
「もう結構時間が経っちまったからな」
ギルガメッシュはしゃがみ込み、セリスの顔を覗き込むようにした。

「バッツはな、跳び箱の選手だったんだ。小さな頃から毎日練習して、一歩一歩上達させてきたんだ。
 地道な努力だったと思うぜ。こんな夜にはいつも家の裏庭からバッツの跳び箱と格闘する音が
 聞こえてきたもんだ。
 その甲斐あってな、バッツは地方大会で優勝することができたんだ。
 あのときのバッツの嬉しそうな顔といったらなかったぜ。
 しかもそれで終わりじゃないんだ。バッツにはまだ夢があったんだ。
 来年は世界大会だ、きっと俺はやるぞってな……」

もちろんでまかせである。バッツの過去などギルガメッシュは知らない。
この女を困らせてやりたいだけなのだ。
セリスはうつむきながら膝にあるバッツの顔をじっと見つめている。
肩を震わせて泣いているように見える。
ギルガメッシュは間をおいて、更に責めたてた。

「……跳び箱ってのはな、両手両足があって初めてできるもんだ。どこかが欠けたらバランスを取ることは
 できない。ダメなんだ。
 あんたはバッツの夢を潰しちまった。目が覚めて自分の腕が元通りにならないと気付いたとき、
 バッツはどんなに苦しむだろうな」

「あああっ」
セリスが天を仰いで溢れんばかりの涙を目に溜めながら、叫んだ。
「私は、私は、どうすれば……」
形の良い唇が半開きになって揺れ動いた。

「あんたの右腕を代わりにくれたら、許してやらんこともない」
さあ、根性見せてくれるか、セリスさんよ
ギルガメッシュは心の中でそう付け加えた。
【バッツ/ギルガメッシュ 所持アイテム:鋼鉄の剣 現在位置:H-20 防砂林】
 第一行動方針:バッツの回復待ち、
 第二行動方針:ファリス、レナ、クルル、ガラフとの合流(さしあたって塔へ向かう)
【セリス 所持アイテム:ヒールロッド 現在位置:H-20 防砂林 】
 第一行動方針:バッツに尽くし、従う

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